4−2 高年齢船員が安全に働ける船舶(設備・設計に対する要望)
1.高年齢船員(主に内航貨物船及ぴ漁船)のための船舶諸施設のあり方
比較的生活空間にゆとりがある商船とは別に、漁獲という大作業のもとに計画され、建造されている漁船の場合、規模の大小はあるが、船は生産手段そのものと考えられてきたといってよく、いわば船も漁具の一つであった。朝に出て夕に帰る、ごく小規模な漁業ではその影響は小さかったが、沿岸から沖合へ、そして遠洋へと船脚を伸ばせば伸ばすほど、その居住者にとっての過酷さはさらに増幅していったに相違ない。
今日、船員の高齢化が進む中で、災害防止のための船舶諸施設を考えるに当たっては、個々の事故例を参考にして考えるという従来の対処療法的な手法の他に、船上での生活環境、作業環境の改善を含むより広い体系化された快適な職場環境の建設を考えることが必要であり、さらには、船上での対応に限らず、陸上支援、海上交通システムの改善を含む広い視野から科学的に体系化された船舶保全における諸作業システムの安全化を考察することが必要である。
現状の我が国の、内航船や漁船の船員状況は、このような総合的視野から高齢化による災害に対処しなければならぬほど、少人数化、高齢化が進んでおり、このような観点から対処することが、結果的には、若者をこの職場に呼び戻し、船員の高齢化を抑制し、高齢化による事故を減少させることにもっながると考える。
このため今後の改善に向けての対策の基本を次のように考えてみたい。
(1)まず、生活環境については乗務員の船上での生活を考え、できるだけ陸上の標準的なもの以上とするという考え方がなければならない。
即ち、船員の居住環境については、高年齢船員の精神的、肉体的負担を軽減するため、プライベートな時間・空間を確保し、また、共有空間についても可能な限り陸上のそれにできるだけ近いものを設ける等の配慮が必要である。
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